この記事では2020年に会社を辞めてフリーランスになった起業1年生向けに、確定申告のやり方をお伝えしています。

給与とフリーランスの売上の両方がある場合にどのようにすればいいのか、医療費控除についてもお話ししますね。

当記事での使用ソフトは弥生会計ですが、お使いの会計ソフトでも同様の項目や機能があると思いますので参考にしてください。

前編・後編と分かれていますが、前編は確定申告の手前までについてです。すべての経理処理が終わったつもりで実は間違ったままかもしれないので、「自分はこの状態で確定申告書類を作り始めていいのか」という気持ちで確認してみてください。

2021年(2020年分)の確定申告期限

毎年の確定申告は2月15日~3月15日頃に、申告と納税を済ませるという運用です。2020年分については20201年3月15日(月)が期限となります。

確定申告書類を作る前の準備

それではさっそく、確定申告書類を作る前に処理することや確認することについて説明します。

1年分の経費と売上をすべて入力して5つのポイントをチェック

まずはここからですね。経費も売上も入力漏れがあってはいけません。すべて入力したかどうか今一度確認をしましょう。
確認をするポイントは「お金の残高と合わせる」ことです。

① 普通預金の入出金の履歴が、会計ソフトと通帳で一致しているか
② クレジットカードで購入したものの合計と引落金額が一致しているか
③ 売掛金(売上の未回収分)の残高が合っているか
④ 買掛金や未払金(外注費などの経費の未払分)の残高が合っているか
⑤ 現金の残高と帳簿上の残高が合っているか

まずはこの5点をチェックしましょう。ここが合っていない場合は入力漏れもしくは二重で入力してしまっているなど、ミスがあるということです。

補足として③以降について少し詳しくお話しします。
まずは③の売掛金について。

例:1月の売上100,000円がクライアントから振り込まれるのが2月末

このような取引を掛取引(かけとりひき)といい、1月末に発生して2月末に振り込まれるまでは売掛金が100,000円ある状態になりますね。
2月末に振り込まれたとき、売掛金は0円になります。
この売掛金の残高が合っていないということは、2月に入金されたときに売掛金を0円にするのではなく、もう一度売上を計上している可能性があります。

もしくはその反対で、1月に売上の入力を忘れていたのにもかかわらず、2月に振り込まれたときに売掛金を減らす処理をしてしまっているケースも考えられます。
また、クライアントが振込手数料を差し引いて振り込んだ場合は、その手数料分は支払手数料で経費として入力するなどの処理が必要ですが、それをしていない場合も残高が合わなくなりますので注意しましょう。

次に④の買掛金と未払金(未払費用)についてです。
これは売上とは反対に、あなたが支払うべき経費について、請求書が来た月ではなく翌月以降に支払う場合ですね。
払ったはずの買掛金や未払金が残っている場合は、振り込んだタイミングでもう一度経費にしてしまっている可能性があります。
その反対に買掛金や未払金がマイナスになっている場合は、請求書が来た月に経費と処理していなかったのに、振り込んだ時に買掛金や未払金を0円にする処理をしてしまっていることが考えられますので、残高が合っていない場合はチェックしてみましょう。

次に⑤の現金についてです。
プライベートと事業でお財布を分けて現金が混ざらないようにしている場合や、クライアントから現金で料金を受け取っている場合などは、帳簿上の現金と手元にある現金の残高が一致しているか確認する必要があります。
合っていない場合は③④のケースと同様の原因が考えられますので、入力の漏れや二重の入力を確認しましょう。

帳簿上の残高と実際の現金の残高の一致確認をしていない人は、実際の現金残高に合わせる処理が必要です。

例:現金の残高が100,000円あるはずなのに、90,000円しかない場合

これは事業用のお金を10,000円分、あなたがプライベートで使ってしまったと考えて事業主貸を10,000円増やします。
帳簿上の現金残高100,000円の状態で下記の入力をします。

借方 事業主貸10,000円 / 貸方 現金10,000円

こうすると、現金の残高が90,000円となり、実際の現金の残高と一致しますね。

この反対に実際の現金残高の方がたくさんある場合は、あなたが事業にお金を貸してあげていると考えて、事業主借を10,000円増やしましょう。

例:現金の残高が100,000円あるのに、帳簿上の現金残高が90,000円しかない場合

帳簿上の現金残高100,000円の状態で下記の入力をします。

借方 現金10,000円 / 貸方 事業主借 10,000円

こうすると、現金の残高が100,000円となり、実際の現金の残高と一致しますね。

ちゃんとお金を数えて、実際の現金残高と帳簿上の現金残高を毎日合わるという管理ができないと感じた人は、現金という勘定科目を使うのをやめることをおすすめします。
初めから事業主貸と事業主借を使っておけばこのような処理は必要ありません。
売上を現金でもらって自分のお財布に入れたら「事業主貸」、自分のお財布から現金で買い物をしたら「事業主借」で処理をしていけば、現金を数えることも残高を合わせる処理もしなくてOKです。

減価償却や家事按分など決算処理をする

すべての経費と売上をもれなく間違いない入力し終えたら、決算処理をします。
決算処理にはいろいろなものがありますが、起業1年生のフリーランスという人が関係するのは家事按分と減価償却の可能性が高いのでここではこの2つに絞って説明をします。

備品や機械、ソフトなどの減価償却

聞いたことはあるけれどその実よくわからないのが資産と減価償却の関係ですよね。
あなたが起業1年生で青色申告をするという前提で、簡単に概要を説明します。

10万円以上の備品やソフトなどを購入したときは消耗品費などの経費ではなく備品という資産として入力します。
あまり意味が解らないまま備品だから備品という勘定科目を使っている人もいるかもしれませんが、おそらくそれは経費にはなっていません。
通常の会計ソフトであれば、備品という勘定科目は経費ではなく資産の科目として登録されています。

金額によって処理の仕方が変わりますので、金額別に紹介しますね。

例:10万円未満の備品

10万円未満の備品であれば「備品」という資産ではなく「消耗品費」という経費にします。机や複合機や動画編集ソフトなど、どんな機械やソフトあっても10万円未満なら消耗品です。
消耗品というと使ったらなくなってしまうような、文具やコピー用紙のイメージかもしれませんが、会計上では10万円未満のものを消耗品と処理しています。
つまりポンコツの中古車を8万円で購入したら、それは消耗品費で処理ですからね。

例:10万円以上20万円未満の備品

この金額の備品やソフトは「一括償却資産」と呼ばれ、3年かけて減価償却してよいことになっています。

購入時の処理 備品150,000円 普通預金 150,000円
確定申告時の処理 減価償却費 50,000円 備品 50,000円

50,000円ずつ備品を減価償却費という経費に振り替えていく処理を3年間すると、3年目の決算時には備品が0円になりますね。
購入金額を3で割って、3年かけて毎年処理をするのが一括償却資産の処理の仕方です。

例:10万円以上30万円未満の備品

この金額の場合は少額減価償却資産の特例という個人事業主や小さな法人に適用される制度により、全額を一括で費用にできます。
つまり、
購入時の処理 備品 280,000円 普通預金 280,000円
確定申告時の処理 減価償却費 280,000円 備品 280,000円

ということになります。
「なんだ、それなら30万円以下のものはすべて購入時に消耗品費でいいじゃないか」と思いますよね。しかし会計上の考え方としては、資産は資産であって消耗品ではないので正しい処理が必要です。
もしも資産にするべき備品を消耗品にした場合、税務調査で認められない可能性があります。
1円も経費にできず、その分追徴課税が課せられるリスクがあるという意味ですので、この程度のちょっとした面倒はやっておきましょうね。

例:10万円以上の備品を通常の減価償却処理をする

一括償却資産と少額減価償却資産の特例についてお話しましたが、これらの処理をしない場合や30万円以上の場合は通常の減価償却処理をします。

資産には建物や土地、車や機械などさまざまなものがありますよね。一括償却資産の時は3年でしたが、資産によって何年間かけて減価償却するか(=耐用年数)が決められています。
耐用年数という表現なのですが、実際にその資産が何年使用できるかは関係なく、あくまでも会計処理上の話です。

こちらが資産別耐用年数の一覧表が掲載されている国税庁のページです。

車の場合は「車両・運搬具、工具の耐用年数」を見ます。パソコンの場合は「器具・備品」を見てください。

では50万円の複合機(新品)を購入した場合を例に処理の仕方を説明しますね。
複合機は「器具・備品」ページの「事務機器、通信機器」欄にある「複写機」ですので、耐用年数は5年です。

購入時の処理(購入日が2020/7/3)
2020/7/3 備品 500,000円 普通預金 500,000円
確定申告時の処理
2020/12/31 減価償却費 50,000円 備品 50,000円 (6ヶ月分だけ処理)
2021/12/31 減価償却費 100,000円 備品 100,000円
2022/12/31 減価償却費 100,000円 備品 100,000円
2023/12/31 減価償却費 100,000円 備品 100,000円
2024/12/31 減価償却費 100,000円 備品 100,000円
2025/6/30 減価償却費 50,000円 備品 50,000円 (6ヶ月分だけ処理)

2020年の1月ではなく7月に購入しているので、購入した年は7月~12月の6ヶ月分だけを減価償却費にします。
2年目以降4年目までは12ヶ月分、最後の年は1月から6月までの6か月分を減価償却費にします。

1月に購入したのではない限り「月割り」する必要がありますので注意してください。一括償却資産のように毎年同額にはなりません。

資産は時にグルーピングが必要

ちなみに、購入時の金額(備品の金額)の考え方ですが、セットで使うものは1セットの合計をひとつの資産として処理をします。

例えば下記の金額の事務所の応接セットを購入したとします。
テーブル(50,000円)×1、ソファ(30,000円)×4の合計170,000円
この場合は170,000円の備品がひとつという考え方をするので、
備品 170,000円 普通預金 170,000円
という処理です。
ひとつひとつが10万円以下だから消耗品費にするという処理は間違っていますので注意してください。

デスクトップパソコンも、モニターとPC本体をセットで購入したらその2つの合計金額で一つの備品です。
モニターは今のを使い、PC本体だけ5万円で買い換えたらそれは消耗品費ですよ。

減価償却は毎月計上しても期首に計上してもOK

毎月きちんと経理をしているフリーランスの人は少数派かもしれませんが、減価償却費を確定申告の時にすべて処理すると、年間の所得金額が一気に変わることになります。
減価償却は1年分まとめなければいけないわけではないので、月割りして毎月減価償却費を計上していくと、正確に月々の所得を把握でき、納税額の計算もしやすくなります。
また12月ではなく1月の時点でその年の減価償却費を計上する処理をしてしまえば(日付だけ12/31にしておきます)、所得金額や納税額の計算も正確になりますので、そのように処理しても問題ありません。

仕事でもプライベートでも使うものは家事按分

フリーランスの場合は家事按分(かじあんぶん)という概念が必要になるケースが多いです。
例えば、仕事とプライベート共用のスマホの料金や車のガソリン代・車検代、自宅を事務所にしている場合の家賃など、仕事とプライベートの両方で使用しているものがありますよね。これらは使用割合を算出して、仕事の分だけを経費にするというのが家事按分です。

「使用割合を算出」とさらっと言いましたが算出の仕方に決まりはありません。資産の耐用年数のように一覧表があればいいのですが、決まりがないので自分で考えて計算する必要があります。

家賃の場合は仕事で使用しているスペースにかかる家賃だけを経費にするのが一般的です。ノートパソコン1台とプリンターくらいしか仕事のものがなく、1Kに住んでいるというような人は、その机と椅子とプリンターを置いているスペース分だけ、ということです。
その机で食事をしているのであればさらに仕事での使用割合は少なくなります。
自宅インターネットの料金などは、仕事とプライベートの利用時間で案分する方法もあります。

家事按分の処理は毎月でも確定申告時でもOK

減価償却費と同様に家事按分も費用が発生するごとに処理することで、所得金額や納税額の計算を正確にすることができます。
例えば家賃150,000円のうち3万円だけ経費にする場合、

・確定申告時に家事按分
毎月引落時 地代家賃150,000円 普通預金 150,000円
確定申告時 事業主貸 1,440,000 地代家賃 1,440,000円

・毎月案分
毎月引落時 地代家賃 30,000円 普通預金 150,000円
事業主貸 120,000円
確定申告時 処理なし

となります。

家賃のように毎月同額であれば計算も簡単ですが、ガソリン代や光熱費など変動してしまうものは入力するたびに按分の計算をするのは面倒ですよね。
弥生会計の場合は家事按分を処理するための機能があるので確定申告時に一括処理でいい人はこの機能を使ってください。
まず家賃は20%、水道光熱費は10%など項目ごとに按分比率を登録しておきます。12ヶ月分入力し終わったら、按分仕訳の処理機能を使います。年間の家賃の80%、水道光熱費の90%を自動計算して事業主貸に振り替える仕訳を自動で入力してくれるので、自分で計算する必要はありません。

この機能はいつでも使えるので、毎月家事按分仕訳をしてもOKです。ただ処理日付が12/31になり、トータル金額になってしまうので注意してください。

例:毎月のガソリン代(車両費)50,000円を家事按分処理して50%だけを車両費にする

・ガソリン代を入力
伝票番号1 1/31 車両費 50,000円 事業主借 50,000円
・家事按分処理
伝票番号2 12/31 事業主貸 25,000円 車両費 25,000円
・ガソリン代を入力
伝票番号3 2/28 車両費 50,000円 事業主借 50,000円
・家事按分処理
伝票番号2 12/31 事業主貸 50,000円 車両費 50,000円

このように伝票番号2の家事按分処理の金額が上書きされていくだけで、1/31と2/28にその月の分だけを按分処理して登録してくれるわけではありません。
会計ソフトのfreeeでも同様のようなので(2020.12現在)、毎月の所得をしっかり把握したい人は、面倒ですが自分で都度計算しましょう。

金額のずれが大きい家賃だけは毎月按分処理、その他は確定申告時に一括で按分処理というやり方でももちろんOKです。

さて、ここまでで確定申告書類を作る前の確認、処理作業は終了です。
後編では税務署に提出する書類の作成についてお話ししますね。